MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
 そんなふうに思っていたのか。
 それは実の娘だから感じるある種の嫉妬か、それとも周りから見れば誰でもそう感じるのだろうか。

「だけど、あなたには悪いことをしたと思ってるの」

「なにが?」

「私もワガママだけどパパもワガママよね。あなたの気持ちを無視して私と結婚させたんだから。私だって契約のような形であなたと結婚した。考えてみたら私もパパもあなたをバカにしてるわ」

 今更二年前のことを持ち出されても困る。
 俺はバカにされたなどと思ってはいないのに。
 頼まれたのもあるが、結婚は俺自身が決めたことだ。

 俺は自分の人生に望みなどないから。
 義父の恩に報いながら静かに生きる。ただそれだけでいい。

「だから、これはささやかなお詫びというか私からのプレゼントよ。普段絶対に笑わないあなたの笑顔が見たくなったの」

「……え?」

「あなたに愛する人が出来たら、こうしようと前から決めてた」

 凛々子は極上の笑みを浮かべ、なに食わぬ顔で「乾杯しましょ?」とグラスを掲げた。

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