MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
 樹里が一緒に物件探しを手伝うと言ってくれていたけれど……彼女も仕事が忙しい。
 その上、会社員の樹里と販売員の私では基本的に休みが合わない。
 日にちを合わせて一緒に物件を見て回るとなると、いつになることやら。

 だから、不動産屋にはひとりで行くつもりだった。
 良い物件があれば内見させてもらい、話を持ち帰って樹里に相談すればいい。

 日下さんにはもう会わないつもりでいた。
 あの事件の夜、最後にしようと決めたから。
 だから十年も前の、笑われそうな思い出話までしたのだ。

 これ以上日下さんと一緒にいたら離れられなくなりそうで怖い。
 不倫でもいいから、ずっと二番目の女でもいいからと、彼にすがってしまいそう。

 そんなのはやっぱりダメだ。
 公序良俗に反するだとか、真面目すぎることを言うつもりはないけれど。
 最初はただ一緒にいたいという気持ちだとしても、いつの間にか彼を独占したい気持ちに変わってしまうかもしれない。
 貪欲で厚顔無恥な女には絶対にならないとは言い切れないのだ。
 日陰の身で不毛な関係をずっと続けられるほど、私は強くいられないと思う。

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