MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
『知り合いの不動産屋が隠し持ってた物件なんだ。わけありでもないのに家賃も安い。一緒に見に行ってみないか?』

 日下さんはどうしてここまで私によくしてくれるのだろう。

 もしかして……私と都合よく身体だけの関係になりたいのかな?
 いや、ありえない。それならこの前会った夜になにか仕掛けてきてもおかしくなかった。ホテルの部屋でふたりきりだったのだから。

 だけど日下さんは私に指一本触れなかった。
 ツインで並べられた隣のベッドで横になり、結局朝まで一緒にいてくれた。
 だから彼にそういう気はないのだろう。

 それに私じゃなくても、彼とそういう関係になりたい女性は探せばいくらでもいそうだ。
 日下さんがほかの女性を抱きしめて首筋にキスを落とすところを想像し、あわててその妄想を頭からかき消した。
 たったそれだけの妄想で、胸が締め付けられるようにギシギシと痛い。

「日下さん、私も仕事がありますし……」

『悠長にそんなことを言ってたら、優良物件がよそに流れてしまう』

「はぁ……でも……」

『あんな良い物件はほかにない。逃してもいいんだな?』

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