MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
 まるで脅されているみたいだ。
 そこまで言われると、ものすごく惜しくなってくる。
 新しい住み家を探しているのは事実だし、もちろん良い物件のほうがいいに決まっている。

『わかった。俺が代わりに見て、問題がないなら手付けを打っておく』

「え?!」

『相手は知り合いだし、手付けをはずめばほかに譲ることもしないだろう』

「ま、待ってください!」

 それはいくらなんでも困る。
 どれほどの手付けを打つのかわからないけれど、あとで私が実際に見て気に入らなかったとしたらそのお金はどうなるのか。
 返ってくる保証はない気がする。

「今日は早番なので……そのあとでもいいですか?」

『わかった。君の仕事が終わるころに駐車場にいる』

 なんて強引な約束の取り付けだろうか。
 日下さんって、こんなに強引な人だったかな? と思わせるほどに。

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