MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
 日下さんが警察官と話をしている。
 私はどう考えても、乗るなら救急車のほうだ。

 救命士の人に「歩けますか?」と気遣われながら、救急車へと乗り込む。
 日下さんは警察に行くのだろうと思っていたら、こちらに駆け寄ってきて一緒に救急車に乗ってしまった。

「付き添ってくれるんですか?」

「ああ。警察はあとから事情を聞きに病院に来るって。君とも直接話がしたいそうだ」

 それもそうだ。バイクで引かれた当事者は私だから説明する必要がある。
 棚野さんと知り合いだということも、なぜこんなことが起きたのか、ということも話さなけばならない。


 病院に着くと、早速治療を受けた。
 身体が地面に叩きつけられたせいか、あちこちに擦り傷が出来ていたし、激痛が走っていた右腕は腫れていると思ったらやはり骨折していた。

 ギブスをしてもらい、首から三角巾で腕を吊る。
 骨が折れたせいで発熱していて、頭がぼうっとしていたけれど。
 処置が終わって病院の廊下に出ると、日下さんが歩み寄って来た姿が目に入ってきて、安心したのかじわりと涙が浮かんだ。

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