MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
 いつ死んでもかまわない?
 投げやりとも取れる言葉を言う日下さんの表情は、いつも通りポーカーフェイスだ。
 なぜそんな悲観的なことを口にしたのか、真意はまったく読み取れない。

「日下さんに死なれたら、私は困ります」

「……そうか」

 私の言葉でフッと表情を緩め、日下さんがカフェモカに口を付けた。

「これ……甘いな。ブラックにすればよかったか」

 日下さんはカップをじっと眺めながら独り言のようにつぶやいた。
 キャラメルマキアートもカフェモカも、どちらも女性好みだと思う。
 きっと私がよろこびそうなものをふたつ買ってきてくれたのだろう。

「日下さんは、普段はコーヒー派なんですか?」

「そうだな。仕事柄コーヒーが多い。紅茶も飲むけど」

 彼のようなイケメンが優雅に紅茶を飲んでる姿も似合いすぎるほど似合うと思う。
 まるでおとぎ話に出てくる貴公子みたいだ。
 そんなことを頭で考えていると、ふと日下さんと目が合った。

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