MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
「右腕、大丈夫か?」

 愛し合った後、彼が心配そうに聞いてきた。
 そのくせ腕枕をした手で私の髪をくるくるともてあそんでいる。

「くっつきかけてた骨がまた離れたかもしれませんね」

「悪い。この歳になって、あんなに余裕のない抱き方で」

 不本意だというような口調で言われたら、私は苦笑いを返すしかない。
 余裕のない彼も色っぽくて、男らしくて、……素敵だった。

「気持ちが通じ合ってうれしかったんだ。笑顔がかわいかった女子高生と十年ぶりに再会して……本気で好きになったんだから」

「考えたらすごいですよね。あのときお互い名前も知らずに別れたから、再会しただけでもミラクルなのに」

 これは巡り合わせなのか、運命のいたずらなのか。
 神様が再び会わせようと仕向けたのか、それとも私たちが心のどこかでずっと求めていたからなのか。
 どれなのかは定かでないけれど。

 私はまた、この人に恋をしてしまった。

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