MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
 無表情に淡々とそう告げられたら、私はとりあえず納得したように相槌を打つしかない。
 そのあと私たちはひとことも喋らないままだった。日下さんは車をしばらく走らせて、とあるレストランの駐車場に停めた。

 レストランに入ると、まずその天井の高さに圧倒された。
 二階席もあるようだが、一階のテーブル席の真上は吹き抜けになっていて、とても開放的で優雅な空間が造られている。
 内装は白を基調にしているため、清潔感があってとても綺麗だ。

 席に案内されてスタッフからメニューの説明を受けたが、慣れていない私はなにを注文すればいいのかよくわからない。

「あの、これって……」

「地中海料理だ。嫌いだった?」

「いえ! あ、なるほど。地中海料理はよくわからないので、私はどれでもかまいません」

 ギリシャやスペイン、ポルトガル……
 メニュー表の料理名の右端にそれぞれの国旗が載せられている。

 文字だけのメニュー表なので、どんな料理なのかまったく想像がつかない私は、日下さんにオーダーを丸投げをした。
 わかるのはパエリアやアクアパッツァくらいなのだから仕方がない。

 日下さんはディナーのコースと赤ワインをスマートにオーダーしてくれた。

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