MIRACLE・雨の日の陽だまり~既婚者副社長との運命の再会~
「私、地中海料理のコースなんて食べたことないです」

「そう。体験できてよかった」

「はい。どんな料理が登場するのか楽しみです」

 エヘヘと笑いかけてみたけれど、それでも彼の無表情は崩れる様子がない。

 どうしたら、この人は笑うのだろう。
 どうしたら、その鉄仮面を剥がせるのだろう。

 日下さんが思いきり笑った顔は、いったいどんな感じなのだろうか。

 そんなことをぼうっと考えていたら、赤ワインが運ばれてきた。
 赤くて綺麗な液体がピカピカのワイングラスに注がれていく。

「お誕生日おめでとうございます」

「ああ。ありがとう」

 グラスを合わせてふたりで乾杯をしたけれど、せっかくのお祝いの席だというのに彼はここでもやはりポーカーフェイスだ。

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