愛されたい、だけなのに
コンコンー・・・
北川先生が校長室をノックし、 ゙どうぞ ゙と中から返ってきた。
校長室に入室すると、校長が待っていたとばかりに椅子に座っていた。
「・・・話は、北川先生から聞いています」
「はい」
一緒に入室した北川先生は、校長の横に立っている。
「櫻井という生徒は無事だったのですか?」
「はい。今は自宅で待機させています」
「自宅というのは・・・」
「一人で住んでいるマンションですが、マンションの契約は今月いっぱいだそうです」
「そうか・・・だから、柳先生のご自宅で一緒に暮らすと?」
「・・・はい。櫻井のご両親の承諾はもらっています」
「そうですか…」
「校長、いくらなんでも常識的に考えて教師と生徒が同じ家に住むなど考えられません!PTAや他の保護者にバレたときには、柳先生が辞表を出して済む話じゃないですよ!?」
「…辞表を出す覚悟で言っているのですか?」
「必要であれば…」
「そうですか…」
「校長!」
「わかりました。許可しましょう」
「…ありがとうございます」
「校長!?」
「ただし、このことは北川先生と私しか知りません。他の先生方には知られないようにしてください」
「はい」
「後、学校でのその生徒との必要以上の接触は避けること。もちろん、家でもですよ」
「はい」
「柳先生を信頼して、一人の生徒を預けるんですから…信頼を裏切るようなことは、絶対しないでくださいね」
「はい」
「よろしい。もういいですよ」
「ありがとうございました」
深く校長に頭を下げると、校長室から退室した。
途中うるさく言っていた北川先生は、驚きのあまり途中から黙ってしまった。
「はぁー…」
誰もいない廊下で、おもわず溜息が出てしまった。