愛されたい、だけなのに
マンションに着くと部屋の鍵は開いていて、柳先生が先に帰っているのがわかった。
「・・・ただいま」
まだ慣れない挨拶を小さな声で言うと、リビングのドアを開けた。
「・・・櫻井、今何時だと思ってる?」
「!」
腕を組んだ柳先生が、ドアの前に立っていた。
「高校生が出歩く時間でもないし、何の連絡もないから心配するだろ?」
少し怒った口調で話す、柳先生。
「何かあったら、お前の親御さんに何て言えばいいんだ・・・」
「!」
お父さんと、お母さんに?
「保護者の承諾をもらった限りはー・・・」
私にもし何かあったら?
「心配なんかしません。それに、私に何があろうとあんな親に言う必要なんかありません」
私は捨てられたんだもん。
「さく・・」
「遅くなってすいませんでした。もう、寝ます」
そう言うと、リビングを出た。
柳先生の隣の部屋が、マナの部屋。
自分の部屋に入ると、鞄を床に投げ捨てベッドにダイブした。