愛されたい、だけなのに



見守ってたって・・・ずっと、榊原と二人でいるのを見てたの?

「!」

柳先生の手が肩に触れ、そっと背後に隠される。


柳先生の背中で、榊原が見えなくなった。

「あんまりしつこいと、モテないぞ」

「あ!?誰のせいで、この学校で彼女ができないわけか教えてやろうか?」

「いや、わかってるからいいよ」

「本当、男子生徒には性格悪いなぁ」

「お前の態度が悪いからだろ?」

「あ!?」


柳先生と榊原の口論が目の前で起こっているが、何だか遠くに聞こえる。



「・・・っ」


大きな背中から伝わって来る、柳先生の優しさ。


そう思うと、心が温かくなる。



「・・・櫻井」

「!」

小さな声で、呼ばれた。

「お前、榊原と飯食べに行きたいか?」

背を向けたまま、柳先生が聞いてきた。


「・・・いえ」

榊原と二人で行きたくないとか、そういうわけじゃない。

今の私の心はー・・・


「そうか、わかった」


柳先生に向いているからだ。







< 165 / 397 >

この作品をシェア

pagetop