愛されたい、だけなのに
榊原と蘭と温泉街を巡り、夕飯の時間になった頃に旅館に戻った。
「あー!圭吾、もう食べてる!!」
部屋に戻ると、柳先生が先に夕飯を食べていた。
「お前らが遅いから」
「ちゃんと時間に帰ってきたし!もうっ」
怒った蘭が、柳先生の隣に座った。
「櫻井、先に座っていいよ」
榊原にそう言われ、少し迷いながらも蘭の真向かいに座った。
「めっちゃ、美味しい!こんな豪華な料理、初めて!!」
目の前に座る蘭が、柳先生の肩を叩きながら感動している。
「食事のときぐらい落ち着いて食べれないのか」
「蘭に落ち着けっていう方が無理なんだよ」
「ちょっと!榊原!!私だって、マナみたいに落ち着いた一面もあるんだよ!?」
「「・・・」」
自信満々に言った蘭に、無言の柳先生と榊原。
「マナ!何か言ってよ!!」
「え・・・」
何かって・・・
「蘭といると楽しいよ?」
で、いいのかな?
「ほら、櫻井が困ってるじゃねぇか。蘭に落ち着きはねぇな」
鼻で笑いながら言った榊原。
「ちょっと、榊原!?あんた・・・」
ヒートアップしそうな空気の中ー・・・
「蘭に落ち着きはないかもしれないが、周りの空気を明るくしてくれるところがお前の良さだよ」
柳先生がそう言った。
「圭吾・・・」
今にも抱きつきそうな蘭。
それを制止する、柳先生。
「私、圭吾と結婚するー!」
「俺はイヤだ」
目の前で繰り広げられられる、漫才みたいなやり取り。
漫才って言ったら、蘭に怒られそうだけど・・・
「櫻井、食べてる?」
「あ、うん」
隣に座っている榊原が声を掛けてきた。
「俺、伊勢海老って初めて食べた」
「私も」
「普通の海老とは大違いだな。高級な味がする
」
「そうだね」
隣で黙々と食べ始めた、榊原。
目の前に座っている柳先生と蘭は、楽しそうにお喋りしながら食べている。
「・・・」
旅行ってこういうものなんだー・・・