愛されたい、だけなのに



「おい、蘭。なんで、圭吾は温泉に行っちゃダメなんだ?」

「…」

そうだ、なんで柳先生だけー…餌って…

蘭のあまりの迫力に、あの時は言葉が何も出なかった。


「さっき、旅館に戻って来たとき…若い女の団体客を見たのよ。風呂上がりの圭吾なんか、そういう若い女たちの餌になるだけじゃない!」

あぁ…餌ってそういう意味ー…

でも、餌って…


「確かに。お前、すげぇな」

「他の女に圭吾を取られないようにするには、ここまで徹底しなきゃ!!」

「!」

「取られないようにって…圭吾、彼女いるんじゃなかったっけ?」

「それはまだ見えない敵だもん!!事実かどうかもわかんないし!今は見える敵を、どれだけ減らすかってことだけよ!」

「すげぇな…」


…本当に。



もし、蘭に私が柳先生と同居してるってバレたらー…



「マナ?大丈夫?」

「!」

「また具合悪い?」

「ううん!大丈夫」

「なら、良かった!さ、温泉入って美人になるぞー」

「入ったからって、美人になるわけじゃないぞ」

「榊原、うるさい!」



蘭は唯一の友達ー…



もし、バレたら蘭とはどうなっちゃうんだろう?





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