愛されたい、だけなのに
翌朝ー
目が覚めると、柳先生の姿がなかった。
「圭吾?さすがに3人でホテルから出るわけにはいかないって言って、明け方に先に帰ったよ」
ソファで寝ていた榊原に聞くと、そう返ってきた。
「そうなんだ…」
昨日、いつの間にか泣き疲れて眠ってしまっていたらしい。
制服が濡れたまま寝たから、シワシワだ。
それに、まだ頭がぼーとしている。
「今日は櫻井は、学校休んでいいってさ。制服もそんな状態だし、昨日のこともあるし」
昨日ー…
「俺も休みたいって言ったら、お前はアホだから勉強しろって。ホント、男には厳しいよな」
あー…私ー…
「って、櫻井聞いてる?」
昨日は自分のことでいっぱい、いっぱいだったけど…
私、榊原にまた酷いことしたー…
「榊原、わたしー…」
「あぁ、そうだ。昨日、付き合おうって言ったのやっぱなしな」
「…え?」
榊原の唐突な発言に、驚く。
「旅行の時から櫻井の様子がおかしかったから、ちょっと試してみただけだったんだ」
試してみただけ?
「案の定、OKもらったけどさ…今の櫻井は違うんだろ?」
ドクン。
「あ…」
今の私はー…
「…うん」
榊原の告白を、断る。
「だよな。でも、俺は今の櫻井の方が好きだな」
「榊原…ごめん」
「何で謝るんだよ?あ、今のは告白じゃないから!こう…人として…って、何必死になってんだ俺は」
「ごめん…」
「だから、謝るなって。あ、そろそろ出ないと延長料金発生する!櫻井も早く出る準備!」
そう言うと、榊原は慌てて支度を始めた。
「圭吾のやろー、もしかしてのために延長料金ぐらい置いてけよなー」
榊原のぶつぶつを聞きながら、ホテルから出た。