愛されたい、だけなのに
しとしとと雨が降る中、速足で家に帰る。
¨圭吾と付き合うことになったら教えてね¨
蘭が言った言葉を思い出す。
「いやいや…ないから」
誰もいないのに、つい言ってしまった。
柳先生は教師として、私を助けてくれた。
けど、世の中の教師がそこまでするのかー…
¨私はあなたの方が心配ですよ¨
校長先生が言った言葉も気になっている。
ピルル!
「!」
胸ポケットに入れていた携帯が鳴った。
ポケットから出すと、画面には¨着信 柳先生¨。
滅多にない電話に、慌てて通話ボタンを押した。
[あ、櫻井?今、もう家?]
「いえ…今帰ってるとこです」
[雨降ってきただろ?俺の部屋、窓開けっ放しなんだよ。悪いけど、帰ったら閉めといてくれる?]
「はい」
[ありがとう。櫻井も雨に濡れたなら、風邪ひかないようにな。今日帰るのちょっと、遅くなるから夕飯は先に食べてて]
「はい」
[じゃあな。気をつけて]
そう言うと、電話は切れた。
機械音だけが聞こえる。
何か今の会話ー…
¨何か新婚さんみたい¨
「!」
ぼっと、顔が赤くなったのがわかった。
蘭が変なこと言うから!!
私はただの生徒で、同居人でってー…
「わっ…」
さっきよりも雨が強くなっている。
早く帰らなきゃ!
走って家に向かった。