愛されたい、だけなのに
ガチャ。
「!」
玄関の鍵が開く音がした。
「あーあ、びっしょり。スーツ、クリーニング出さないといけないな」
そう言いながら帰ってきたのは、柳先生。
「あ、櫻井。どうした?そんなとこで」
柳先生の部屋を出たと同時に、帰ってきてしまった。
「…ま…窓閉めたんですけど、間に合わなくて部屋の中が濡れてますよ」
「マジか!じゃあ、今日はソファで寝ないといけないな」
部屋の中を覗きながら、柳先生が言った。
「ありがとな、櫻井」
「…いえ」
柳先生の顔を見れなくて、目を逸らしてしまった。
こんな態度だと、柳先生に気付かれてしまう。
普通にしなきゃいけないのに、見てしまったものが衝撃的すぎてー…
「わ…私、夕飯作ってきます」
その場にいれなくなってしまい、逃げるようにキッチンへと向かった。