愛されたい、だけなのに




翌日、なるべくいつも通りに柳先生と接した。

気付いているのか、気付いていないのかわからないが柳先生もいつも通り。

何かを聞いてくることはない。


そんなことにホッとしながらも、頭の中は昨日見た遺書のことでいっぱいだ。


一人で悩むのはよくないと思ったけど、こんなこと蘭にも榊原にも言えない。



「櫻井さん、おはようございます」

「!」

校庭を歩いていると声を掛けてきたのは、花壇の水やりをやっている校長先生。

「お…おはようございます」

いきなりで、驚いた。

「元気ですか?」

「はい」

…あ。

「それは良かった。今日も授業、頑張ってくださいね」

校長先生の顔を見て思い出した。


「…あの!」

ずっと気になっていた。


「少しお聞きしたいことがあるんですが、いいですか?」

"私はあなたの方が心配ですよ"

どういう意味で言ったのかー…



「…これから授業あるでしょ?」

「あ…」

そうだ。

授業サボって、話なんか聞いてくれないよね。
校長先生だしー…



「放課後、校長室に来なさい。柳先生に見つからないように」

「!」

返事をする前に、校長先生は行ってしまった。



…良かった。聞いてもらえる。










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