愛されたい、だけなのに






わかってはいたが、呼び止められることはない。


もし呼び止められても、あんな母親の顔なんか二度と見たくない。



母親とも思いたくない。




「…あんな奴」



行き先もなく、歩く。



「はは…どうしよう」



涙も出ない。


怒りも感じない。


一気に脱力した感じ。




「…頑張ったつもりだったのにな」




居場所を守りたかった。



柳先生に教師を辞めて欲しくなかった。




私のせいで迷惑をかけてしまうのは嫌だった。



だから、この道を選んだのにー…




自分の力で何とかしたかった。



けど、振り出しに戻ってしまった。





「…柳先生」



柳先生ー…



柳先生ー…




柳先生ー…





頭の中で何度も呼ぶ。



声に出して呼べないから。





柳先生、私はどうしたらいい?





< 311 / 397 >

この作品をシェア

pagetop