愛されたい、だけなのに




「…助けてって言えばいいんだよ」


「!」


俯いて歩いていた顔を上げると、そこにいたのはー…



「助けてって言えばいい。辛かったら、つらいって言えばいい」


…なんでー…



「櫻井、俺はお前にそう言ったよな?」



ここにー…



涙が目に溜まり、前がよく見えない。




「言ってくれなきゃ、わからないよ?」



優しい笑顔でそう言ったのは、柳先生。





何度も声に出さずに呼んだ柳先生が、目の前に現れた。




「…柳先生」


頬に涙が伝って落ちていくのがわかる。




「柳先生…」


声に出して呼んではいけないと思っていた名前。



「柳先生」


どうしてここにいるかわからない。



「柳先生!」



けど、真っ暗闇だった先が明るく照らされる。












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