愛されたい、だけなのに


「え!?あ…いや…」

慌てて顔を反らした。

ドキドキ。

ビックリした…

ドキドキ。


自分の手で自分の胸を押さえると、振動が伝わってくる。

さっきよりも、ドキドキしてる。



「…今日、出掛けるのやめとくか?」

「!」

「昨日戻って来たばかりだし、疲れてるだろ?」


え…ちがー…


反らしていた顔を柳先生の方に向けると、ぽんっと温かい手が頭を撫でた。


「今日はゆっくり休んだ方がいいよ」

安心させるような優しい表情で、柳先生が言った。


「っ…」


きゅんっと、また胸が締め付けられた。



…違う。


疲れてるからじゃない。


「…柳先生」


柳先生にドキドキし過ぎて、どうしていいかわからなくなってしまったから。


それにー…


「私、疲れてません。あと…私もお姉さんのお墓参りに行きたいです」


今この機会を逃したらきっと、柳先生はお姉さんのお墓参りには二度と、連れて行ってくれないような気がする。



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