愛されたい、だけなのに


選んだ洋服は、カーキ色のロングスカートにワインレッドのハイネックニット。

並べてみた洋服から、お姉さんがどんな服装が好きだったから想像できた。


「すいません!お待たせしました」

マンション1階の駐車場まで降りると、車に寄りかかって待っていた柳先生を見つけた。


「いや…大丈夫…」

目が合った途端、じっと見つめられる。

ドキ。


え…何?

洋服似合ってないとか?


柳先生と目を合わせていられなくなり、俯く。


「…似合ってるよ。櫻井に着てもらって、母さんも喜ぶ」

「!」


今、似合ってるよってー…


顔を上げた時には、柳先生はもう運転席に乗り込もうとしていた。



あ…私も乗らないと!


でも、どこに?


「櫻井、助手席」

迷っていると助手席の窓が下がり、車内から柳先生が手招きしている。


「あ…はい」


慌てて車に乗り込み、シートベルトを締めた。









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