愛されたい、だけなのに
「…らい」
遠くから声が聞こえる。
「…くらい」
身体も揺すられてるような感じ…
「櫻井!」
「!?」
大きな声で名前を呼ばれ、ハッと目を開けた。
…あれ?
ぼけーっとしたままの脳内。
「気持ち良さそうに寝てるとこ悪いけど、着いたよ」
「え?!」
私、寝たフリをするつもりが…
「大丈夫か?」
本当に寝てしまった。
「…大丈夫です」
寝てしまったことに、驚いた。
「俺、花買ってくるから。この道を真っ直ぐ進んでて。すぐに追いつくから」
「はい」
柳先生は駐車場近くにある花屋へ向かった。
この道を真っ直ぐ…
お墓とお墓の間にある道を真っ直ぐに進む。
「…」
休日のためか、人とすれ違うことが多い。
お墓参りなんか、久しぶり…
小学校低学年ぐらいに、おじいちゃんの3回忌で家族揃って行ったのが最後だった。
あの時は、まだ仲良かったんだけどなー…
「…もしかして…」
そんなことを思いながら歩いていると、背後から女の人の声が聞こえた。
「…マナちゃん?」
「!?」
え…
突然名前を呼ばれ、振り返った。