愛されたい、だけなのに


「あの日屋上で死のうとしていた私に、柳先生は"心で動け"って言ってくれて、抱き締めてくれたんです。その時、やっと無だった自分に涙が出たんです」


抱き締められた時の体温、温かさー…


「毎日、毎日誰もいない家に帰って一人で過ごした日々。親が離婚するときに、邪魔者扱いされたこと。信頼していた先生に、裏切られたこと。再婚するから、もう養育費を払わないと言われたこと」

次々と出てくる、心の奥底に閉まっていた思い。


「もう傷つきたくなくて心に鍵をかけた私に、向かい合ってくれたのは柳先生だった」


全部、受け止めてくれた。



「だから、私は今生きている」



柳先生と出会わなかったら私は、きっとー…



「…そんな柳先生に出会わせてくれたのは、お姉さんです。だからー…」


こんな言い方をしていいのかわからない、けどー…



「お姉さん、ありがとう。柳先生と出会わせてくれて…私に生きる道を示してくれて」


お姉さんが眠る墓石に向かって、一礼をした。








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