愛されたい、だけなのに
「…何で気付いてあげられなかったんだって、今だに思うんだ」
「…」
柳先生の小さな声が聞こえ、一礼していた頭を上げた。
「何でその道を選んだんだ。何で、周りの大人達は守ってあげなかったんだ。何で、相談してくれなかったんだ」
隣にいる柳先生を見上げると、真っ直ぐ墓石を見て喋っている。
「ずっと、その想いがあった。けど、死んでしまったら、助けてやることもできない」
柳先生の身体が震えている。
「残された俺にできることは何かって考えた時、教師になる道を選んだ。姉さんと同じようになってほしくない。俺はどんなことがあっても、生徒を守る教師になるんだって」
柳先生の強い想いが、心に伝わってくる。
「その想いに、やっと解放されたような気がする」
「…」
解放?
見上げていると、柳先生と目が合った。
「櫻井と出会えて良かった!」
そう笑顔で柳先生が言った。