愛されたい、だけなのに





「…何で気付いてあげられなかったんだって、今だに思うんだ」

「…」

柳先生の小さな声が聞こえ、一礼していた頭を上げた。



「何でその道を選んだんだ。何で、周りの大人達は守ってあげなかったんだ。何で、相談してくれなかったんだ」


隣にいる柳先生を見上げると、真っ直ぐ墓石を見て喋っている。


「ずっと、その想いがあった。けど、死んでしまったら、助けてやることもできない」


柳先生の身体が震えている。



「残された俺にできることは何かって考えた時、教師になる道を選んだ。姉さんと同じようになってほしくない。俺はどんなことがあっても、生徒を守る教師になるんだって」


柳先生の強い想いが、心に伝わってくる。


「その想いに、やっと解放されたような気がする」

「…」


解放?



見上げていると、柳先生と目が合った。



「櫻井と出会えて良かった!」


そう笑顔で柳先生が言った。





< 341 / 397 >

この作品をシェア

pagetop