愛されたい、だけなのに
「マナちゃん」
「!」
車の鍵を握っている手を、ぎゅっと握りしめられ向かい合った。
「圭吾の家が嫌になったら、いつでもうちに来ていいからね。旦那は離婚していないし、圭吾も出て行ったっきり帰って来ないから寂しいのよ」
握られている手から、体温を感じる。
「マナちゃんの帰る場所は、ここにもあるってことも覚えといて」
ドクン。
"帰る場所"
キュンっと胸が熱くなった。
「…っ」
目頭も熱くなり、目に涙が溜まる。
「…はい」
涙が零れないように、俯いて返事をした。
返事をすると、さらに強くぎゅっと握りしめられた。
「じゃあ、私は行くね。圭吾によろしく。またね!」
ぱっと手が離れた。
その瞬間、ひんやりと手に風が当たる。
けど、心は温かいままー…
手を振り去っていくお母さんの後ろ姿を、見つめることしかできなかった。