愛されたい、だけなのに
「母さん、帰ったのか?」
「!」
トイレに行っていた柳先生が、いつの間にか戻ってきていた。
「櫻井、疲れてない?まさか、母さんも墓参りに来てるとは思ってもなかったからな」
ため息をつきながら、柳先生が言った。
「いえ…いいお母さんですね」
自然と出た言葉。
「まぁ…そうだな。母さんのいる前では、言えないけど」
そう、恥ずかしそうに柳先生が頭を掻きながら言った。
「じゃあ、帰ろうか。遅くなると、渋滞する」
先に歩き出した柳先生。
「あ、はい」
その後を追うように歩く。
"圭吾とお母さんをよろしくね"
「…え?」
耳元で女性の声がし、ばっと後ろ振り返った。