愛されたい、だけなのに
しばらくすると、母親が身支度を整えて戻って来た。
並んで歩くことはなく、学校までの道のりは、お互いに一言も喋らなかった。
母親との会話よりも、今は学校の人たちにどう説明するか。
もしかしたら、説明しても柳先生の処分は変わらないかもしれない。
けど、私が今できることはこれぐらいしかない。
「…あんた、柳先生の家は居心地良かったの?」
「え?」
学校の正門前で、突然母親が聞いてきた。
居心地良かったの?ってー…
「…うん」
柳先生は、とても良くしてくれた。
「そう」
それだけ言うと、母親は校内へと入って行く。
先に行く母親の数歩後ろを歩き、後に付いて行く。
なんで、そんなことを聞いてきたんだろ?
そんな疑問を抱きながら、職員室へと向かった。