愛されたい、だけなのに
「私が言いたかったのは、そんな難しいことじゃなくて…圭吾と二人で暮らすことによって、マナちゃんの恋の視野が狭くなっちゃうんじゃないかと思ったからよ」
「恋の…視野?」
圭吾くんが呆然と、お母さんを見つめている。
「まだ結婚してるわけじゃないでしょ?今の二人を見ていると、お付き合いもまだでしょ?そんな男女が一緒に暮らすだなんて、もし圭吾よりもっといい男が現れたら、マナちゃんが可哀想じゃない」
「…母さん…そういう意味での、視野が狭くなるってことか…」
「そうよ。だから二人で暮らすんじゃなくて、三人でここに暮らせばいいのよ」
「…頭が痛くなってきた」
お母さんのパワーに、完全に圧されている。
「マナちゃんの願いも叶えられていいでしょ?」
「いいのは…いいけど…」
まだ、圭吾くんは頭を抱えている。
そんな姿を見て、自分がとんでもないワガママを言ってしまったんじゃないかと、焦る。
「あの…無理なら…」
"いいです"と言おとしたが、隣にいたお母さんに肩を掴まれた。
「え?」
耳元で囁かれた、お母さんの言葉。
"本当は私のワガママなの。息子と娘が揃って一緒に生活しているのを、楽しみたくて"
「…お母さん」
隣にいるお母さんをじっと見つめた。
"しー"っと口に指を当て、笑っている。