愛されたい、だけなのに
そんなお母さんに、思わず笑ってしまった。
「圭吾!この家で、マナちゃんに手を出そうとしたら殴るからね」
「…そういうのいいから。母さんは、もう黙れ」
「母親に向かって黙れって何よ!?」
揉めているように見えるが、お母さんはとても楽しそう。
これが、お母さんの幸せ。
「マナちゃん、今日は卒業祝いにご飯食べに行きましょう!」
「はい」
「もちろん、圭吾のおごりね。さ、支度しましょう。マナちゃんも着替えておいで」
「はい」
先にリビングから出て行ったのは、お母さん。
「はぁー。母さん、すげぇな…負けるわ」
長い溜め息が、圭吾くんから漏れた。
「…これがお母さんの幸せなんです」
「え?」
「で、私も幸せです」
満面の笑みで、圭吾くんに言った。
「…初めて出会った時とは、大違いだな。やっと、本当の笑顔見れた」
圭吾くんの手が、頬に触れた。
「その笑顔見れて、俺も幸せだ」
優しい、優しい笑顔。
私の好きな笑顔。
やっと、見つけた。
私の幸せー…