命の灯が消える、その時まで
「ん、どうした? 顔めっちゃ赤いけど。もしかして、熱? 」
さっきまでの笑顔を引っ込めて、眉をひそめる藤塚くん。
慌てて顔を手で覆いながら、首を横に振って、否定の意を伝える。
すると、急に笑い声が弾けた。
「な、なに!? 」
顔を手で覆っているから、私の視界は真っ暗だ。
顔の火照りが引いていることを祈って、私はそっと手を顔から離した。
「え、藤塚くん…? 」
開けた視界に映ったのは、お腹を抱えて笑い転げる藤塚くんだった。
「はははっ! お前、首振るにしてもそんな必死に振らなくてもいいだろー! ははっ! 」
「え、そんなこと…? 」
「そんなことって、めっちゃおもしれーよ! 」
…そうなのかな?
鏡に向かって首を振ったことなんてないから、何が面白いのか全くわからないけど、楽しそうに笑う藤塚くんを見ていたら、自然と笑みがこぼれた。
そんな私を見て、はっとした表情をする藤塚くん。
そして私の肩を、ガシッと掴んだ。
「お前、俺に初めて笑ってくれた! 」
「え? 」
「お前、朝河とかには笑いかけるし、ピアノ弾いてる時も笑ってたけど、俺の前で笑ったことなかったんだよ」
…え、そうなの?
無意識だった。
「きっと嫌われてんだろうなーって思ってた。ま、ずっと仲良くなかったんだし、それもそうかなと思ったんだけどさ」
んー、それはそうかも。