命の灯が消える、その時まで
『ねーすごく美味しいそう! 』
メニューを広げたらしい夕凪ちゃんは、はしゃいだ声をあげる。
私も、顔を覆った手の指の隙間からそっと覗くと、色とりどりのメニューが見えた。
『んー、何にするか迷っちゃう! 日向は決めた? 』
『俺? 俺はハンバーグプレート一択だけど? 』
『…あっそ』
なんだか残念そうな声の夕凪ちゃん。
きっと、日向くんとメニューについてあれこれ話したかったんだろうな。
『おい萌音、いつまで顔覆ってんだ? 』
急に巳影くんに声をかけられ、慌てて両手を顔から離した。
『ううん、なんでもない! 』
『そ? 萌音何にするか決めた? 』
『ううんまだだよ。巳影くんは? 』
『俺も迷ってる。ナポリタンかシーフードカレーがいいなって思ってるけど』
ううー、もう2つまで絞ってるんだ…。
私なんて全然決めてないよ…。
早く決めなきゃと頭をフル回転させる。
視線はメニューの上を行ったり来たり。
でも、全然決まらない。
もー、どうしてこう私は優柔不断なのぉ!
『萌音、悩んでるのはわかるけど、百面相しないで』
呆れたような、巳影くんの声が聞こえた時、私は突然ひらめいた。
『私、ナポリタンかシーフードカレーのどっちか頼むよ! そしたら巳影くん両方食べれるでしょ? 』
『え、お前それでいいの? 』
『うん! 巳影くんが食べたいと思ったもの、私も食べてみたいし、少食だからどうせ残しちゃうもの』
『じゃあそうしよっか』
優しく笑った巳影くんに、またキュンとした。