命の灯が消える、その時まで
『ごめん、日向。私ちょっと気分悪いからお手洗い行ってくるね』
『え、大丈夫かよ』
『うん、1人で平気だから。ここにいて?』
『…ああ』
日向はほんとに優しいね。
こんな奴の体調も心配できるなんて。
ただの仮病なのに。
日向の前にいたくないからついた、嘘なのに。
どうして君は何も疑わず、心配してくれるの。
潤んだ瞳を見られないよう、俯き加減で踵を返した。
あくまでも落ち着いた歩みで、でも気持ちは早くここを離れようと焦っていて。
不自然にならないように、でも少しでも早く。
こっちを見る日向の視線から逃げるように、私はデパートへ向かった。