命の灯が消える、その時まで


トイレで泣きそうになっていた目を冷やし、ついでに顔をパシャパシャ洗った。


そうすればいくぶんかすっきりした。


『戻らなきゃなぁ』


あんな風に振り切ってしまったし、ちょっと気まずい。


でも、そんな風に感じてるのだって私だけだ。



だって、日向は私が具合悪いと思ってるんだもん。


だからきっと、私があそこに戻れば純粋に心配するに決まってる。



『あー、なんであんな人好きになっちゃったんだろ…』


鏡に映る自分に向かって吐いた言葉。


返事なんて、あるわけないのに。



__なりなよ。


『え?』


__自分の気持ちに、素直にさ。



声が、聴こえる。


周りには誰もいないはずなのに。


『ねえ、誰かいるの!?』


__私はあなた。あなたは私。


『どういうこと!?』



私はこの声から逃れたくて、もつれる足を必死に動かして、トイレから飛び出した。



< 139 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop