命の灯が消える、その時まで
トイレで泣きそうになっていた目を冷やし、ついでに顔をパシャパシャ洗った。
そうすればいくぶんかすっきりした。
『戻らなきゃなぁ』
あんな風に振り切ってしまったし、ちょっと気まずい。
でも、そんな風に感じてるのだって私だけだ。
だって、日向は私が具合悪いと思ってるんだもん。
だからきっと、私があそこに戻れば純粋に心配するに決まってる。
『あー、なんであんな人好きになっちゃったんだろ…』
鏡に映る自分に向かって吐いた言葉。
返事なんて、あるわけないのに。
__なりなよ。
『え?』
__自分の気持ちに、素直にさ。
声が、聴こえる。
周りには誰もいないはずなのに。
『ねえ、誰かいるの!?』
__私はあなた。あなたは私。
『どういうこと!?』
私はこの声から逃れたくて、もつれる足を必死に動かして、トイレから飛び出した。