命の灯が消える、その時まで
走る、走る、走る。
人混みを掻き分けながら。
ときに人にぶつかり、悪態をつかれるけど。
そんなことにかまってなんかいられない。
ただひたすら走った。
日向目指して。
自動ドアを駆け抜け、大好きな彼のところまであと少しというところだった。
『ひゅう…』
名前を口にした途端、心臓が誰かに掴まれたように痛くなった。
そのままそこに崩れ落ちる。
上手く息が吸えない。
『おい、夕凪!』
大好きな彼が私の名前を呼んでいる。
でもその声さえもだんだんと遠のいて。
最後に聴こえたのは、トイレで聴いた声だった。
__ほーら。早く素直にならないから。あなたはもうすぐ死んじゃうのに。
【夕凪side end】