命の灯が消える、その時まで
*・*・*
まず、私たちが向かったのは映画館。
この間公開されたばかりの恋愛映画を見た。
真夕と藤塚くんが何を見るかでもめたけど、村澤くんも真夕と同じ恋愛映画が見たくて、結局こうなった。
「いやー、面白かったねー!」
「ほんとほんと。さゆちゃん可愛かったなぁ」
ちなみに村澤くんはこの「さゆちゃん」って女優さんが好きで、真夕の味方をしたらしい。
「ちぇっ、やっぱ眠くなったし」
2人とは反対に、藤塚くんはご機嫌斜め。
私はどっちつかずだったから、藤塚くんみたいなダメージもないし、真夕たちみたいにテンションが高いわけでもない。
「藤塚くんはどんな映画見るの?」
「俺? 俺は洋画とか見るなぁ」
「へぇ! なんか似合うね!」
「そうかぁ?」
苦笑した藤塚くんは、頭をガシガシかいた。
「お前はどんなの見るの?」
「私は…映画館で映画見たことないんだ、実は」
「え、マジ!?」
そう、私は今まで誰かと出かけるなんてことはなかった。
両親は共働きで忙しかったから家族で出かけることもなかったし、友達もいない。
そうなると必然的に家にいることが多くなった。
だから映画を選ぶときもどっちつかずだった。
何が面白いとか、全然分からないから。
テレビで映画が放送されれば見ることもあったけど、家では本を読むことが多かった。