命の灯が消える、その時まで


私の腕を強引に自分の腰に巻きつけながら、早口でボソッと彼は告げた。


「俺だって、緊張してっから」


予想外の言葉に、顔に熱が集中する。


そんな真っ赤な顔が見られなくてよかったと、初めて2人乗りに感謝した。


「おっしゃ、行くぜ!」


グイッとペダルを漕げば、ぐんぐん進む自転車。


時折すれ違う女の人たちが、こぞって藤塚くんを2度見する。


そして決まって2度目は睨まれる私。


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