命の灯が消える、その時まで
コンコンッと静かにノックされた扉。
「はい」
「実織ちゃん、高瀬です」
私はスマホの電源を切って、「どうぞ」と声をかけた。
「実織ちゃん、最近調子はどう?」
「別に、普通ですよ」
「それ、嘘だよね?」
サラリと言われて、言葉に詰まる。
ずっと検査でもそう言い続けていたし、熊沢先生も何も言わなかったからバレていないと思っていた。
「いつから気付いてたんですか?」
「最初っからよ。私も先生も実織ちゃんから話してくれるのを待っていたのだけど…」
思ったより進行が早くてね。
申し訳なさそうに眉を下げながら、そっと高瀬さんが告げた。