命の灯が消える、その時まで
確かに最近苦しそうな表情を見せることもあったし、心配はしていた。
だけど濱時の症状がそんなに悪いとは夢にも思わなかった。
そんなにもショックなのに、いや、だからか俺は濱時の部屋の前を離れることができなかった。
みゅーちゃんが椅子から立ち上がる音でハッと我に返り、数歩ヨロヨロと後ずさった。
見つかる。
そう反射的に思った瞬間、俺は自分の部屋に向かって駆け出していた。
足音を殺して、2人に見つからないように。
嘘だ、あいつに余命があるなんて。
きっとあれだ、2人とも俺があそこにいることに気付いていて、俺を驚かそうと口裏合わせたんだ。
きっとそうだ。
…そんなことあるわけないじゃないか。
そう事実を呟く自分がいる。
それでも俺は現実を見たくなかった。
[幻冬 side end]