命の灯が消える、その時まで
初めて見た藤塚くんの滑る様子は、獅子のように力強く、蝶のように軽やかで、言葉を失うほどに美しかった。
こんな美しい演技の演奏が、私でよかったのか不安になるくらい。
やっぱり藤塚くんはすごい人なんだ。
私なんかが手を伸ばしたって、到底届かない…。
「濱時! どうだった?」
それでも彼は、まっすぐに私のところへ来てくれる。
それが何より嬉しかった。
まるで、私と彼は同じステージにいるみたいだから。
「すっごく良かったよ。ありがとう」
「へへっ! でもこれはさ、お前のおかげでもあるんだ」
「え、私?」
「ああ。あの曲のおかげで俺はここまで上手く滑れたんだ」
「そんな…。私の曲なんかなくてもきっと藤塚くんは上手く滑れてたよ」
私がさっと俯くと、はぁとため息が聞こえた。
「ネガティブになるなよ」
「え?」
「ポジティブでいればな、きっと幸せはやって来る。だから前を見ろって」
真剣味のある藤塚くんのその声に、私は引き込まれた。
まるで、経験したことを語るかのような大人な口ぶり。
___君は昔、辛いことがあったの?