命の灯が消える、その時まで
「さっ、ここ寒いだろ? 早く出よう」
「うん、そうだね」
藤塚くんの演技を見ているときは全然気付かなかったけど、確かに寒い。
念の為ってパーカー持ってきててよかったな。
肩にかけていたそのパーカーを羽織り直すと、それに気付いたのか、藤塚くんが自分のジャージを差し出した。
「え?」
「これ、ちょっと汗臭いかもしんないけど、厚手だから貸してやるよ」
「ありがとう」
私が持っていたのは夏物の薄手のものだったから、本当にありがたい。
自分の物の上にさらに藤塚くんのジャージを重ねてみせると、彼は満足したように頷いた。
「うし、行くか」
「うん!」
藤塚くんの後ろをついて歩きながら、もう一度リンクを振り返る。
きっと私がここに来ることは、もうない。
だけど、不思議と胸は軽かった。
それは、さっきの彼の言葉が私の心を軽くしてくれたから。
「…また来るね」
ポツリ、と呟いた言葉は藤塚くんにも聞こえていたのかな。