命の灯が消える、その時まで
ひとしきり笑った真夕は、私の顔を覗き込みながら言った。
「実織ってさー、化粧してないよね? 」
「え、うん」
化粧なんて、必要ないし。
それにしたところでどうせ私は変わらない。
地味子を絵に描いたような私なんて。
「もったいなーい! こんな可愛いのに! 」
……はい?
あなたの方がよっぽど可愛いと思うのですが。
「ねーねー、髪は? カラーリングしないの? 」
「うん、面倒だし」
…どうせすぐ死んじゃうかもしれないんだし。
「えー、どうせならしなよ。だって実織、ガンでしょ? 」
顔が、引きつるのが分かった。
なんで、それをあなたが知ってるの?
ううん、まだ知ってるだけならいい。
だけど、どうしてそんなにあっけらかんと言えるの?
「……って」
「え? なに? 」
「帰って! 帰ってください! 」
こんな大声、初めて出したかも。
そう、冷静に分析する私も頭の中にはいた。
だけど、心は、頭の言うことなんか聞いてくれない。
バンッとベッドを叩いたつもりだけど、ポスッと間抜けな音が出ただけだった。