命の灯が消える、その時まで
病室の前でもう1度念を押した高瀬さんは、そのままナースステーションに戻って行った。
扉の前で立ち尽くす私たち。
『なぁ』
不意に巳影くんが口を開いた。
『な、なに? 』
ちょっと裏返った声で返事をする。
…恥ずかしい。
『曲、楽しみにしてるから』
『う、うん! 頑張るよ! 』
『あ、あと』
巳影くんが体をかがめた。
うわー、巳影くん肌綺麗。
え、肌?
私そんなに近くで巳影くん見てたっけ?
20cm近い身長差のある私は、いつも巳影くんを見上げるばかり。
そんな巳影くんの顔が近くに?
待って、近すぎてぼやけてない?
そう思った次の瞬間、唇に柔らかく、暖かい何かが触れた。