命の灯が消える、その時まで
ご飯が終わって、身支度を整えた私を、高瀬さんが迎えに来てくれた。
実は熊沢先生に会うのは今日が初めて。
昨日名前だけ言われてたけど、実際に見たことすらない。
「ここだよ」
ついたのは内科の1番奥の診察室。
__コンコン
「失礼します、高瀬です。濱時さんをお連れしました」
中からくぐもった返事が返ってくる。
それを確認して、高瀬さんは扉を開けた。
…うわあ。
「クマみたい…」
ハッとして口を押さえる。
私ったら何言ってんの!
いくらクマに似てたからって、本人に言うなんて!
私があたふたしていると、熊沢先生が豪快に笑った。
「わっはっはっ! なーに、気にするな実織ちゃん。私は小児科も担当してるんだがね、そっちの子供達には「クマ先生」なんて呼ばれてるんだよ。だから気にしなくていいよ」
…なんて明るい先生。
高瀬さんといい、熊沢先生といい、私には刺激の強い人ばかりだ。
色で例えるなら、黄色。
ぼっちの私は黒。
黒は何と混ざっても黒のまま。
私、これからどうしよう。
とりあえず、深くかかるのはよそうと、心に誓った。