命の灯が消える、その時まで
次に私たちが向かったのは屋上。
私は手の甲で涙をぬぐいながら言った。
『ごめん、暗い話になっちゃった』
『ううん。それより教えてくれてありがとう』
夕凪ちゃんも入院着の袖で目元を拭う。
『なんとなくね、ガンなのは知ってた。でも入院してきたのが最近だから、治るのかなって…』
『そっか…。私もね、ずっとみんなを騙してる気がしてた。言おう言おうって思っても、みんなが離れていっちゃうんじゃないかと思ったら怖くて…』
グッと、もたれていた柵を強く掴む。
不意に体が温もりに包まれた。
『そんなことで嫌いになんて、ならないよ。私たち、親友だもん』
背中に夕凪の温もりを感じる。
その言葉を聞いて、一旦引っ込んだ涙がまた溢れてきた。
ずっといじめられてて。
どんなに逃げても、逃げた先でいじめられて。
人なんか信じられなくなってたのに。
どうしてここで出会ったみんなのことはすぐに信じられるんだろう。
夕凪ちゃんも、日向くんも、巳影くんも。
なんでか私はみんなのことが信じられている。
それはきっと、私に余命があるから。
裏切られてもいいかなって、どうせ死んじゃうならいいかって。
そう思ってたから。
でも、信じてみたら、離れるのが嫌になった。
ああ、なんで私はわがままなんだろう。