命の灯が消える、その時まで
…というか、私の知らない話ばっかり。
なんだか入りにくいな。
さっきまでガールズトークで盛り上がってた心が、一気にしぼんでいく。
そして、私のぼっちな気性が首をもたげる。
「…ごめん、私飲み物買ってくるね」
「あ、おう! 」
真夕の返事を背中で受けて、財布を持って部屋を出ようとした。
そのとき、後ろから右手を掴まれた。
強い力で引かれて、思わずよろける。
受け止めてくれたのは、がっしりした胸板だった。
「えっ…」
「俺が行ってきてやる。病人は病人らしくしてろ」
私の腕を引っ張ったのは、藤塚くんだった。
驚いて、固まる思考。
今の自分の体勢を理解した瞬間、私の顔はブワッと熱を持った。
待って、私藤塚くんに後ろから抱きしめられてるみたいじゃない!?
すると頭の上から微かな笑い声が聞こえた。
「顔真っ赤。ウケる」
「も、もう! 笑わないで! 」
「わーったよ。で、何が欲しいの、飲み物」
そう訊かれて、一瞬迷う。
だって、本当はこの空間から抜け出したくてついた嘘なんだもん。
「えと…ミルクティーで」
「了解」
そう短い返事を残して、颯爽と部屋から去っていく藤塚くん。
私は真っ赤な顔をしたまま、その場に立ち尽くしていた。