命の灯が消える、その時まで
『おいおい、寄ってたかって何やってんだよ』
転入生として俺のいた小学校に雅斗がやって来たのは、3年生になってしばらく経った頃だった。
『あーあー、こんな細っこいやついじめて何が楽しいんだよ。どうせなら強いやつ相手にしたら? 例えば…俺みたいな? 』
3年生にして150cm近くあった雅斗の威嚇の威力は半端なくて。
蜘蛛の子を散らすように、俺の周りにいたいじめっ子がみんないなくなった。
『おいお前、大丈夫か? 』
『う、うん…。あの、ありがとう。君は? 』
『あ、俺? 俺は白刃音 雅斗(しらはね まさと)。お前は? 』
『ぼ、僕、藤塚 幻冬! 』
『げんとかぁ。よろしくな、げんと! 』
『う、うん! 』
雅斗は親が離婚し、母方の実家に引き取られたそうだ。
「俺、"シンケン"の押し付け合いになったんだと」と、祖父母に引き取られた理由をなんてことなさげに話していた雅斗。
だけど、本当はものすごい傷付いていることが、幼かった俺にも分かった。
助けてもらったその日から、俺たちはいつも一緒にいた。
いじめられっ子から俺を守ってくれる雅斗。
親の離婚で傷付いた雅斗のそばにいるだけの俺。
それでもお互いになくてはならない存在だったんだ。