命の灯が消える、その時まで
ただただピアノを弾くことに、夢中になっていた。
だから気が付かなかった。
そっとドアを開けて、この部屋に入ってきた人がいたことを。
「…へぇ、やっぱ上手いんだ」
「…ぇ」
突然声を掛けられて、弾いていた和音が乱れた。
ハッと後ろを振り向くと、藤塚くんが立っていた。
「何…してるの? 」
「いや、それはこっちのセリフなんだけどさ。ここ、来る人そんないないだろ」
「そうだね」
だって前に来た時、ずいぶん埃っぽい部屋だなって思ったんだもん。
「だから俺がここを秘密基地にしてたの」
そんなこと言われてもなぁ…。
「ま、お前ならいいや」
「何それ」
「あー、俺お前に頼みたいことがあんだよ」
「は? 」
「お前さ、俺に曲作ってくんね? 最低一曲以上」
……誰か、今の状況を説明して。