僕は君に夏をあげたかった。
ごめんね
佐久良くんが治療に戻り、10日ほどすぎた。

夏はまだまだ続いている。

その暑さはかげることもなく、毎日30℃超えを記録している。


おじいちゃん家に来たのは、7月の始めだった。

それが、もう8月も半ばに差し掛かろうとしている。

あと2週間ほどで夏休みも終わる。


「……私は、これからどうしよう」


佐久良くんにはずっと待っていると言った。

彼も待っていてほしいと言ってくれた。


だけど、このまま何もせずおじいちゃんの家に引きこもったまま待つのは違うだろうし、佐久良くんもそれを望んではいないだろう。

佐久良くんは病気と、……自分と戦うために戻っていったのだ。

だったら、私も……


「……確か、この辺にしまっておいたよね……」


私は部屋のすみに置かれている自分の荷物をあさる。

以前、あずささんが持ってきた、学校のプリント類が入っているカバンを取り出した。

……実は、まだ一度も見たことがなかった。

学校も、あずささんのことも考えたくなかったから。

でも、それじゃあ駄目だ。


夏休みは終わる。

佐久良くんも戦っている。

なら、私も逃げるのはそろそろおしまいにしないと。
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