僕は君に夏をあげたかった。
ラムネの味
その日の夜。

おじいちゃんと2人で夕食を食べながら、今日の海での話をしてみた。

偶然中学時代の同級生と会ったというと、おじいちゃんは少し考え込むような顔をしたあと、『ああ…!』と手を叩いた。


「そりゃ、夏くんやな。えーと、…佐久良 夏くん。そうやろ?」


「う、うん、そう。すごい、おじいちゃん。よくわかったね」


「なにしろこんな田舎の小さな町や。ご近所さんはみんな知り合い。よそから誰かがやってきても、2・3日もあったら顔見知りになってまうわ。
それで、都会から来た、麻衣ちゃんと同じくらいの年の子は、夏くんくらいしかおらんはずや」


「……そうなんだ」


それじゃあ、私のこともすぐに近所に知れ渡ってしまうのだろうか。

どんな風に広まるのか。


―――おじいちゃんのところに、久しぶりにやってきた孫娘。

それから……?



「……はあ」


まだ広まると決まったわけではないのに、自分が周りにどんな風に言われるか、想像しただけで憂鬱だ。


おじいちゃんは私のそんなため息に気付き、眉をひそめた。


「どうしたんや、麻衣ちゃん。もしかして、夏くんとは仲悪かったとか?」


「う、ううん……違うの。仲はむしろ良かった方だと思うんだけど……。

その……まさかここで会うと思わなかったからビックリしたって言うか……」


「そりゃそうやろうな。でも、それなら良かった。これから夏くんと遊んだり出来るんちゃう?

この田舎町は、麻衣ちゃんには退屈かと心配しとったけど、友達がおるならいくらかは楽しく過ごせるやろ」


「……う、うん。
でも、もうあの頃から2年も経ってるからどうだろう……」

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